第三回:マルチリンガルの語学学習法
母国語以外の言語を習得、使いこなせる人はマルチリンガルと言って良いと思います。
その中でも、
2ヵ国語の場合:バイリンガル(母国語+母国語以外が1カ国語)
3カ国語の場合:トリリンガル
4カ国語の場合:クワッドリンガル
5カ国語の場合:ペンタリンガル
6カ国語の場合:ヘキサリンガル
と続いていく。その総称がマルチリンガルと言われる。
では、これらの学習者達が、最も効率的に学習している内容とはどういう物なのかを見ていきたいと思います。
最も効率的と言うことですから、効率的に学習が出来るほど多くの言語を学習習得できている人たちで有れば、それなりの一定の効率的な学習法を編み出していると考えることが出来ます。
当然、学習に関しては人それぞれ自分の性格や特性とマッチングしているかいないかも左右する話しではありますが、他者を参考にするのも良いと思う。
その中から、自分に合ったやり方にアレンジすれば良いわけだから。あなたに取って効率的な学習方法はあなたにしか編み出すことが出来ない。
私は、色々な経緯を経て情報提供を頂いたある2冊の本を持っています。
これらの本はマルチリンガルで語学習得を果たしたその体験について触れています。
それを、少し紹介したいと思います。
1.シュリーマン著 自伝 「古代への情熱」
古代への情熱―シュリーマン自伝 (岩波文庫)
トロヤの遺跡を発見したことで有名なシュリーマンの話で、彼は数年間の間に10カ国以上を習得したと言われています。
学習方法は至って簡単
「毎日、1~2時間、できるだけ大きな声を出して本を一冊音読し、暗唱してしまう」具体的には
1.非常に多く音読すること。
2. 決して翻訳しないこと。
3. 常に興味ある対象について作文を書くこと。
4. これを教師の指導によって訂正すること。
5. 前日直されたものを暗記して、つぎの時間に暗誦すること。
だそうです。
要するに、音読を主体にしてトレーニングすると言う事で、脳内シナプシス形成をしていくと解釈できます。
ただ、このシュリーマンの方法には異論もあり、少し面白い記事を見つけましたので紹介しておきます。
「まねるな、危険!?十数ヶ国語を数年でマスターした、考古学者シュリーマンの方法」
このサイトで述べていることは、同じか似たような言語体系(文法など)を習得する場合は効果的であるのに対し、全く異なる言語体系の場合は、通用しないのではないか。
特に日本語は他の言語体系と異なるので日本人に対してはこのまま同じ方法では旨くいかないだろう。
結論として、やはり自分にあった学習方法は自分自ら見つけるべきだと。
基本、私も同感である。但し、このシュリーマンの方法は参考になります。特に、音読におけるその効果については興味深いところです。
2. ロンブ・カトー著 「わたしの外国語学習法」
わたしの外国語学習法 (ちくま学芸文庫)
著者は母国を離れることなく、独学で16カ国語をマスターしそのうち5カ国語を一度に自在に双方向理解する事が出来る様になったと言う経歴のハンガリー人。
彼が学習の基本としている事は次の通り
1.外国語学習を始めた最初の日から、学習計画に読書を盛り込むことを恐れないこと。
2.能動的に読むこと。
3.本は、文法を教えてくれるだけでなく、語彙拡充、語彙学習一般にとって、最も堅実な手段である。
4.外国語学習とは、実はこういうひな型を備えていくことに他ならないのです。
5.ひな型を探り当て、選り分け、そしてそれを頻繁に反復するという二つの目的を手に入れるための最良の手段こそが本なのです。
と言った事を冒頭で述べています。
この2者を比べると見えてくる事があります。それは、何れも本を読む事を基本としている事です。しかも、音読する事が良い。そして、毎日続ける事。
ここで言っている事は、すなはち前回に説明した脳内シナプシス形成を早く行う為には、毎日欠かさず音読する事、と解釈できます。
シュリーマンの方法に対する異論で述べていますが、そのポイントは、言語体系すなはち全く文法が異なる言語に対しては音読だけだと限界があり、そう簡単にはいかない点については、何か他の対策を取る必要がありそうです。
そのヒントは、実はロンブ・カトーの方法の中で上記以外で述べている事があります。
どんな言語を母国語とする者も、外国語を学習する際には、自分と同国の人によって書かれた教科書を用いるべきです。この点が大切なのは、同じ言語を学習するにしても、異なる国の人は、学習に際して異なる点で難しさを感じるものだからです。
これは、どういう事を言っているかというと、言語体系の部分で、母国語と同じ様な体系を持っている箇所については、くどく説明する必要もなく、さーっと流しただけでも理解されやすいから、その部分の解説は橋おられてしまう。
しかし実はその橋おられた部分は、別の言語体系を持つ国の人からすると、難解な部分である事がしばしば起こるのだそうです。
その逆もあり、どうでも良いことが、くどく書かれている場合です。
これは、訳者の国では難解であるからこそ詳しく解説されるが、我々にとっては、簡単に理解できることだったりするわけです。
従って、少なくとも自分の母国語との差異に配慮されたテキストを使うべきだという事です。
とりわけ日本語は非常に独特な文法を持っているので、特にラテン系の言語体系とは相性が悪いのは事実です。
まずは、言語体系と言えば文法と言う事になりますので、外国語を学ぶ上で文法は不可欠のスキルと言う 事になります。
その差を理解した上で音読をするのが良いと言う事になります。
但し、音読をするにしてもただ音読を始めても、難しい面があります。そのことは別の回で述べていきます。
いずれにせよ、自分自身の特性を知り、その上で自分にとって最適な学習方法を、自分自身で編み出す事が大切。
その為に色々な人のやり方を参考にし、自分に適応できるかを判断、又は自分に適用できる様に手を加え、オリジナルな学習方法を見つけるのがよいかと思います。
(2010/04/15記)
誤字訂正(2010/04/15改)
文書整形(2010/05/22改)
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