<マインドコラム>



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第一回:我々は条件付けられている

<まえがき>

セルフマインド、つまり自我の心の動きについての話になります。
「条件付け」という言葉に聞き慣れない人もいると思います。

人間は、生まれながらに本能を持ってこの世に生まれてきていますが、育っていく中で様々な人格や才能を出してきます。

ごく平凡に暮らし一生を過ごす人もいれば、一流のスポーツマンになったり、宇宙の心理を説くような科学者であったり、人は様々です。

生まれてから育つまでの間の過程で、どうしてこんなに差が出るのでしょう。

それを、見ていく為に、ある専門の学問があります。心理学の一つになりますが、「交流分析」と日本では呼ばれています。

これは、本来アメリカで発達した学問で"Transactional Analysis"略して"TA"と呼ばれるものです。

この学問は、たとえて言うなれば、孫子の兵法:「人を知り己を知るものは百戦危うからず」を心理面で分析していくもので、自我について、そして相手との心理的な関係を説くものです。

西欧で言われる"TA"は、言葉社会である為、主に言動を中心に分析されましたが、日本のような沈黙社会ではそのまま当てはめる事が出来ず、これを日本の学者達が日本版として見いだしたものを「交流分析」と呼んでいます。

<参考文献>
セルフ・コントロール―交流分析の実際(新書)
続セルフ・コントロール―交流分析の日本的展開 (創元新書 42)(新書)
セルフコントロール―交流分析の実際
人生を変える交流分析


では、今回の主題に入っていきたいと思います。

<交流分析から見た人格形成と条件付け>

交流分析では、自我の心について以下のモデルをもって説明しています。



この図において、
1.は同心円の一番中心で、人間存在の核をなすもの。
2.1.の核を中心としてその周囲を囲むように、我々の気質、体質等の先天的な条件付けです。
3.は2.の先天的な条件付けされた気質や、体質を伴ってそれを覆うように狭義の性格が存在する。
4.3.の狭義の性格の外側に位置し習慣的性格や態度が構成している。

3.4.はいずれも性格を表し、これを合わせてパーソナリティを表現している。
4.の習慣的性格、態度とは社会環境や文化的背景等によって変わる部分でここを通して性格が表面化する。
3.の狭義の性格は人格的交流を左右する部分の狭い意味での性格を表す。

すなはち、1.は本能的な部分、2.は遺伝的な部分、そして3.と4.が性格を形成する。

このモデルでは、1.と2.は生まれながらに持っているものと言う事になりますが、3.と4.は生まれたあとに身についてくるものです。

この3.の狭義の性格は、4.の骨格をなすもので、生まれた直後から年少期、特に3歳頃までに形成されます。

そして4.では、生活の中でその置かれた周囲の環境とともに、習慣化され、態度として表面化する部分。

我々が対人として表面上見えている性格と言って良いでしょう。
しかし、内心は3.が渦巻いています

少し例で説明しますと、
我々の目の前で、バイクが車に衝突しバイクに乗った人が投げ出され転がっていく光景を目のあたりにしたとしましょう。


その時、自分の頭の中にどんな考え、感覚、感情が出ているだろうか?
これは、1つの反応だけでなく複数の事を色々考えてしまうと思います。
例えば、「大丈夫だろうか?」「何かできる事があるか」「関わらない方が良い」「どうしてぶつかったんだ?」等と。

そして、最終的にはそれを見てから1つの行動を起こすわけです。
ある人は「救急車を呼ぶ」、またある人は、野次馬する、またさっさと立ち去る人もいる。

頭の中では複数の事を考えながらも、その中から1つを選択し行動する事で、表面的な性格が表れます。その内心の反応と選択は個々によって違います。

また別の例として、周囲の環境が変われば性格も変わってきます。これは、例えば遠距離の引っ越しをした経験のある人であれば経験していると思います。

  


のどかな九州に住んでいた時と、大阪に来て住みついた時では、周囲の影響で考え方も変わり、それが習慣化され性格となって現れるのです。

主題についてですが、もうおわかりだと思いますが、念のため説明します。

この、人格を形成するモデルにおいて、生まれて以降約3歳頃までに狭義の性格がその時の生活での人と人とのふれあい、特に両親とのふれあいによって条件付けられ、またその後育っていく環境によって更に条件付けされ、性格ができあがる

よく耳にする「三つ子の魂百まで。」という言葉がそのまま当てはまります。

つまり、性格は条件付けによって形成されると言う事です。

条件付けについて、少し例を挙げておきます。

例えば、幼い頃に犬に噛まれたとしましょう。そうすると、犬は恐ろしく、怖い動物だと感じます。それ以来、犬を警戒するようになります。

そして、犬を見る度に逃げる癖が付いてきます。しかし、犬は逃げる子供を余計に追います。そして更に犬に噛まれたり蹴り倒されたりし、そういう事が何度か重なって、犬に対する恐怖心が固定化します。

そうすると大人になっても、犬を見るとドキドキしたりします。

これが、条件付けです。

条件付けは人それぞれですが、例えばいじめに会っていたとか、親に暴力をふるわれ続けたとか、逆にほったらかしにされていたとか。ちょっとした事でもインパクトが強ければ、それも条件付けになります。

私は、大阪に住んでいますが、阪神大震災の頃、多くの友人が兵庫県にいました。

   


震災の後、その友人達と話をすると、建物の下を大きなトラックとかが通った時、わずかな振動を感じただけで、身震いするしてあたりを見渡す、と話していたのを覚えています。

また、良い経験であってもそれによって条件付けされる事があります。
これは、仕事でよくある話ですが、有るプロジェクトを有る方法で成し遂げそれが大成功した場合です。

その経験が、その後この方法でやれば何でも成功すると考え、その方法に固執する場合とか。
時代の流れは速く、もう既にその方法では旨くいかないと気づいたとしても、過去の成功体験が邪魔をして自分を修正できない場合は既にその成功体験によって条件付けられていると言えます。

3.の条件付けは3歳頃までに定着してしまう為、この条件付けを直すのは難しいが、4.の条件付けについては、習慣から来るものなので、意識的に習慣を変える事によって改善の見込みはあります。

今持っている習慣的な条件付けが、自分の生活において不利に動いているとすれば、それは習慣を変える事により、有利に持って行く事も可能なのです。
(但し、一度身につけた習慣はそう簡単には変わらないので、それなりの努力が必要です。)

このことは、自己啓発系の成功哲学等の書物にもよく書かれている事です。

「自分の運命は、自己の習慣を変える事で切り開く事が出来る」

習慣づけを行う事で自分の条件付けを矯正し成功へ導くという考えを全面的に打ち立てて出版されている、成功哲学としては、 「7つの習慣」が一番ポピュラーでしょう。


(2010/05/23記)
イメージデーターの調整(2010/05/25改)