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<中国語コラム(文法編)>の部屋へようこそ

<第二回:辞書の特性について学ぶ>

 どの言語でも言えるのですが、外国語を学ぶ場合、私を含め日本語を軽視しがちです。
理由としては、外国語を学ぶのに日本語は関係ないと考えるからです。しかし、そこに思わぬ落とし穴があることを理解していません。

日本人は日本語がネイティブなので、日本語の文法は考えたことは小学校時代にちょっとだけと言う人も多いでしょう。
実は、それが盲点で、外国語を学ぶ際の落とし穴になります。体に染みついた文法構造で考える為、外国語を学ぶ時に障害となります。英語にしても、中国語にしても活用の仕方、単語の並べ方とかその国の文化を乗せてイメージした文章を作れなければ、その国の人には伝わりにくいものとなります。
単語一つ、漢字一つをとってみても、その生い立ちから見つめ直す事は大切なことだと思います。かといって言語学者の様に突っ込む必要はないです。しかし、文法なり、単語の意味の違いを知っておけば、使い方を誤ることは少なくなると思います。

ここでは、そういった観点から、日本人が中国語を学習する上で使用する辞書について考えてみたいと思います。
中国語の関係の辞書としては一般的には
日中辞典、中日辞典、中中字典
が挙げられるでしょう。
主にこれらの辞書と、日本語の国語辞典、漢字辞典について考えようと思います。

(日本語の辞書)
 よくよく見ると、日本語の辞書(国語辞典や広辞苑)でさえ漢字1文字で意味を調べると品詞が載っていないことに気づく。
特に漢和辞典で見ると面白いのですが、漢字が持つ源流の意味が載っています。(ものによっては、活用語を伴って品詞説明がされていますが。)
日本語の多くは、活用が伴うか、他の漢字と組み合わされて意味をなすからです。

 国語辞典の使い方ですが、基本的には、あいうえお順に単語が載ってあり、辞書引きする為の前提条件として単語の読み方を知っていることが前提となります。
従って、漢字のひらがな読み若しくはひらがなの単語カタカナの単語での検索となると言うことです。もし、読み方を知らない漢字が有る場合は、国語辞典を引く前に漢和辞典を使用して、漢字の読みを理解してから、国語辞典を引くことになります。そういう意味では、国語辞典と漢和辞典は一対で使われるものと考えても良いと思います。


(中国語の辞書)
 ここでは、中国人で広く一般に使われる新华字典(新華字典) を例にとってみます。
新華字典 著 北京商務印書館

 中国の字典もこの漢和辞典の様な者だと解釈すれば、有る意味同じなのである。
新华字典(新華字典)は日本の漢和辞典によく似ていて、その引き方もほぼ同じ。字書の最初の部分に、偏や造りと言った漢字の構成要素が字画数順に載っている。その次にそのパーツを使った漢字の一覧表が字画数順に載った一覧表があり、該当する漢字の閲覧頁が書いてあるのでその頁を開けば漢字の解説にたどり着く。
漢和辞典との違いは、漢和辞典の場合、パーツを使う漢字のトップページから漢字の字画順に漢字が載ってありその部分に漢字の意味が直ぐに載っているのに対し、中国語の場合は漢字一覧にはその意味が載っている掲載頁数が書いてある。漢字は、ピンイン表記に従ったアルファベット順に並べられ、発音を知っていれば、パーツと画数から探す以外に直接字書引きすることも可能な様に構成している。
要するに字書の大きく分けて引き方は2通りあり、「漢和辞典の様に引く」「国語辞典の様に引く」の両方の機能を有しているのだ。

 新华字典(新華字典)の場合、基本的に漢字を引くと1字の漢字しか載っていません。組み合わされる単語は、1字の漢字の説明の中に使われ方として載っています。また、1字の漢字の説明も1、2行程度の簡単なものです。複数の意味がある場合は、数字で番号が書いてあり、分けてあります。

私が初めてこの辞書を手にした時「凄い」と思わず口から一言漏らした。電子辞書にも字画から引く機能を有しているが、その正確さスピードは電子辞書よりこの紙の辞書のが早く必要とする漢字にたどり着く。最終的にピイン表記も分かるので発音が分かる。今でも度々あるが、漢字を調べる時は、まず新華辞典で引いてピンインを調べてから電子辞書を使うといった荒技をすることもある。
漢字を2字以上使う熟語はその漢字を使う同じ所に載っていますが、非常に簡単に書かれている為、日本人には理解しにくい面もあり、そういう意味では日本の中日辞典を併用することは仕方がないことだと思う。

(日中辞典の落とし穴)
 私の身に起こったある出来事があり、日中辞典を乱用することの恐ろしさを目のあたりにしたので少し記述したいと思う。
 会社の仕事で中国の取引先に中国語でメールを出した後、その記述についてある中国人に添削して貰った時の話である。
 「下記の内容について、今弊社の顧客が資料を私達に督促している。」
というような文を中国語で書いて送ったが、そのメールの文章は、
 「关于下面的内容,我们的顾客现在把资料督促到我们。」
でした。
これ、文法的には間違っていないのですが、添削した中国人の解説によると元の日本語の様な意味にはならないと言うことです。
広辞苑で、「督促」の意味を調べると次の様に解説されている。

とくそく【督促】
うながすこと。せき立てること。催促。特に、債務の履行を催促すること。「借金の~」「~状」

これを日中辞典(小学館電子辞書)で引くと、

とくそく【督促】
 督促dūcù, 催促cuīcù

と書いてある。
 これだけ見ると、督促(日本語)は中国語と意味が同じように思えたので、私は、実際に営業から【督促】があったとメールに書いてあった事が頭中にあり、そのまま中国語で書く時に「督促」の漢字を使用しました。

そして中国人の指摘を受け、中日辞典(小学館電子辞書)で逆引きすることにした。
dūcù【督促
 督促する。実行するよう促す。(立場の下の者に)励行させる。

cuīcù【催促
 催促する。

辞書を引くだけではしっくりいかない。「実行するよう促す」と書いてあるのだから良いのでは?

中国人の解説では以下の通りでした。

【督促】上の者が下の者をしっかり監督して何かを実行させ、それをしたことの確認をとる意味。
【催促】誰かに何かをする様に促す意味。


つまり「督促」「督」監督の「督」の意味込められていて、そのことは新華字典にも書かれている。
要するに「監督して促し、実行させること」と言うのが正しい解釈なのだそうです。

一方、「催促」「催」は新華字典で「使赶快行动」と解説されており、意味は、「急いでやらせる」という意味があり、そこから「急いでやらせる事を促すこと」と言うのが正しい解釈なのです。

総括すると、最初の文章をもう一度確認すると、
 「关于下面的内容,我们的顾客现在把资料督促到我们。」
だから、
 「下記の内容について、今弊社の顧客が資料を彼らが監督して私達にやらせて確認しようとしている。」

となってしまい、今ひとつ、すっきりしない訳になってしまいます。意味的におかしいですよね。
そこで最初の文章は次の様に書くべきであった。

 「关于下面的内容,我们的顾客现在把资料催促到我们。」

これだと、
 「下記の内容について、今弊社の顧客が資料を私達に早くやらせようと促している。」
となり、はっきりします。

この経験から感じ取ることは、単純に辞書引きで日中辞典の訳を鵜呑みにして信じないこと、一つ一つの漢字に込められている意味をしっかり理解した上で組み合わさった漢字のイメージがどうなるのかをイメージすること。
 添削いただいた中国人の方からは、中日辞典でも、誤った表記となっており、上記の日本の辞書の説明は間違っていると断言していました。

 これを解決する為には、中国文化、中国漢字の文化に精通した人が編集に関わった辞書でなければ、信用できないと言うこと。
 それだけに、中国語の漢字の持つ意味の重みが非常に濃いと感じます。

 とりわけ、最低限意味を引く時は一緒に中国語の辞典も一緒に引くことをお勧めします。
私は、まだ確認してませんが、中国で売られている中日・日中辞典はまともなのかも知れません。
なぜなら、日本語は微妙なニュアンスを説明できる言語なので、中国漢字に精通した理解の中で日本語に訳されているなら、可能性はあるかも知れない。


(2010/04/11記)
(2010/04/13改)
新華辞典⇒新華字典に修正(2010/12/04改)